夢を追い叶える 明けない夜はないと信じて
私がずっと思い描いてきた夢。それは私のフラメンコにインスピレーションを与えてくれ、育ててくれるグラナダの尊敬するアーティストたちとフラメンコを愛する日本人のアイデンティティーを持った私にしかできない舞台を作るということです。
その夢は、2020年1月にALMA CARAVAN Vol.1 The Flamenco TSUNAGU 『CERRAR LOS OJOS... 目を閉じて…】でやっと歩き出すことができました。
民謡とフラメンコは、共に口承伝承で、労働や、庶民の生活の喜怒哀楽から生まれた芸能です。一見、異なる、三つの表現方法(フラメンコ、舞踏、民謡)は、それぞれの文化性を保持しながらも、感情、日常、人生など言葉がいらない奥深い部分で理解しあい融合しました。
そのパフォーマンスの内に流れる感情は、どの人の胸の内にあるものであり、気づかないうちに涙がこぼれおちた、という嬉しい感想も頂きました。
私達の活動は、それぞれが独自の演奏や表現スキルをもった人たちが集まり、それを聞く人たちの魂に響くショーをしながら旅をします。この魂の演奏旅行を永久に続けたいという思いを込め ALMA CARAVAN アルマ(魂)・キャラバンと名付けました。
小さいながらもALMA CARAVANは2020年1月に出航し、たくさんの方に観ていただき色んな感情を共有することができました。そしてその旅は、ゆっくりながらも続けていけるとメンバー誰もが信じていました。それが…
日本での公演終了後、予想だにもしなかったことがおきます。
それは、深い闇のトンネルに入ったような… でも嵐はすぐに過ぎ去るだろうと最初のころは思っていました。しかし・・・ そう思えなくなるほどの年月が過ぎました。
疫病、紛争、戦争、自然災害 etc..
メンバーの中には、楽器を置いて、経験したこもない畑仕事や、工場の仕事に就いた人もいました。
ロックダウンで2か月間、家から一歩も外に出れない時期を初めて経験しました。
誰か特定の人たちだけが苦しかったのではありません。世界中の人たちが辛く苦しい思いをしました。そしてまだ苦しんでいる人たちもたくさんいます。
このことで、私は世界が平穏でなければ、個人の幸せはないことを痛感しました。
暗いトンネルの中で、私達の胸の奥にあった共通の想いは、【祈り】。
手を合わせたり、形式ばったものではなく、心の奥から自然と湧き出てくる祈りの想い。
その【祈り】を次のアルマ・キャラバンのテーマにしたいとメンバー全員の思いが一致するのはとても自然な流れでした。
2022年、疫病の波にほんの少し明るい光が差し込んできたと思った時に、人類はまた新しい悲しい戦いを勃発させました。それでもスペインやEU圏内では人の行き来が少しずつ緩和され、閉ざされた劇場やタブラオ(フラメンコを見せる小さな劇場)の扉もあき始めました。
私たちもアルマ・キャラバンの船出を準備し奔走しましたが、予想もしなかったいろんな壁にぶち当たりあっという間に時が過ぎ… 最初の出航から早3年以上が過ぎてしまいました。
でも【ORATIO】は必ず出航させると強く信じ、あきらめず、できることをコツコツとやり続け、2024年新緑の5月に日本公演に向けて出航することとなりました!
それぞれの祈り
それぞれの方法で、自分の魂を穏やかにすべく、希望を探しながら前に進んでいく。
私達にとって、身近にある祈りの音。
私が住んでいるスぺイン グラナダではサエタという祈りの曲、日本では祈りの唄である声明、そしてどこの国でも人生にかならず訪れる時の区切りと共に鳴らされる鐘の音。
今日の朝日と夕日、今夜の月を明日も見たいという願い。
希望を見いだしながら、次世代に夢を繋いでいきたいという想い。
暗闇から抜けた時には、喜びの宴(うたげ)や祭りもあることでしょう。
そんな日常。当たり前で尊いもの。
それらをフラメンコと舞踏で表現し、会場に足を運んでくださるすべての方とその時に自分の胸の中に湧き上がる想いを共有したい。 それが【ORATIO】のテーマです。
16世紀にフランシスコ・ザビエルというスペイン人宣教師が来日した歴史。そして、日本の鎖国時代にも禁じられていようとも、自身の祈りを忘れずに貫き通した人たちが住んでいた長崎では、今でも、「ORATIO」オラショという言葉と祈りが存在することを知りました。
400年の時を経て、遠く離れた地で生まれた祈りの言葉は、凍結されたかのように日本に存在しています。
どんな世でも、人々は心の中で祈ってきたのだと思います。
祈りは、特別な習慣なのではなく、私達の生活や心と深く密接している想いなのだと思います。
今の皆さんにとって「祈り」とは何ですか?
THE FLAMENCO 石川亜哉子
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